漁業・水産業界でのAI・IoT活用事例を紹介

前回のエネルギー業界のAI活用事例に引き続いて、ここでは漁業・水産業界について紹介します。

 漁業・水産業界について

日本は、海に囲まれた海洋国家で排他的経済水域を含めると、世界6位の面積をもっています。日本の漁業生産量は、1984年をピーク(1,282万トン)に1995年頃にかけて急激に減少し、その後は穏やかな減少傾向が続いています※(グラフ1)。

これらの原因は、海洋環境の変動の影響と言われています。漁獲量が急激に減った原因は、沖合で獲れるマイワシの減少によるもので、最近話題のサンマやスルメイカも過去最低の数値になっています。これらの魚介類は、既に漁獲規制が行われていて2021年〜2023年には新たにブリやホッケ、マダイなど多くの種類の魚介類が漁獲規制の対象になる予定です。

漁獲規制をすることによって水産資源を保護し、将来的な漁獲量の確保を目的にしています。また、近年の漁業・水産業界では、人材不足や業務の効率化のために設備の新設やAIを使った画像解析等により、効率よく漁業が行える取り組みが行われています。

※ 自国の領海から200海里の範囲内が排他的経済水域と定められていて、ここでは他国から侵害されずに漁業や鉱物、自然エネルギー管理等を行う権利を有する。漁業は水揚げされて初めて物権が発生する。

グラフ1

参考農林水産省HP(漁業・養殖業生産量の推移)

https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_2_2_1.html

水産業界の課題

現在の水産業界が抱えている課題は大きく下記の2つが挙げられます。

1. 水産養殖の効率化。

2.高齢化による熟練労働者の不足と人への負担増

 

水産養殖の効率化

日本の水産養殖が占める割合 ※(グラフ2)は、年々増加傾向で今後も更に増える見通しになっています。そして今後さらに漁獲量が減少し、漁獲規制等の対策により将来的に漁獲量が戻るまでの間、生産者はより多くの水産養殖に頼るが必要があります。他に指摘されていることは、漁獲規制により生産者の収入が減少することで、そのため効率的な水産養殖を行うことが不可欠です。

グラフ2

※参考:水産庁HP(令和2年7月:養殖業成長産業化総合戦略について)

 

高齢化による水産業界の熟練労働者の不足

現在の漁業・水産業界では、高齢化による熟練労働者の不足により、人への負担増が問題になっています。クロマグロの養殖 ※(グラフ3) では、熟練労働者が幼魚の選別などを行いますが、熟練労働者であっても大変な時間がかかってしまいます。そのため、一人の作業者に頼る事が多くなり、他の作業を行うことができなくなっています。そのため、次に紹介する事例では、人工知能(AI)を活用した、クロマグロやマダイの幼魚の自動選別を紹介します。

日本の漁業・水産産業では、養殖の生産量が増加しているため、今後も安定的な魚介類の供給のために効率化・低コスト化が必要です。人手不足を解消するためにも、熟練労働者への負担増を減らすことで、人件費の節約が必要です。コストの削減は、最新の設備の導入やAI(人工知能)の活用、作業者の作業分担の工夫等によって取り組み、安定的な水産養殖の供給を目指します。

グラフ3

※参考:水産庁HP(令和元年における国内のクロマグロ養殖業者の養殖実績)

https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/saibai/200331.html

 

漁業・水産業界におけるAI(人工知能)・IoTの活用事例

ここでは、漁業・水産業界における人工知能(AI)の活用事例を紹介します。どれも最新のAIやML、IoTを活用して作業の効率化を図っているのが特徴です。

 

【人工知能(AI)・IoT技術を活用したクロマグロ幼魚のサイズ測定自動化サービス】

魚の養殖では、餌食量や水揚げ時期を把握するために、養殖いけす内の養殖魚のサイズを正しく知る事が大切です。しかし、従来の人工知能(AI)・IoT技術によるクロマグロ幼魚のサイズ測定自動化サービスは、60cm以上の成魚が対象でした。そのためヨコワと呼ばれる幼魚(30cm未満のサイズ)は、手作業による選別が行われていて、作業の効率化と測定の精度を上げる必要がありました。

そこで、人工知能(AI)とIoT技術による漁業への取り組みとして、画像解析が得意なメーカーと某大手自動車関連メーカーが強力して、クロマグロの幼魚(ヨコワ)のサイズ測定自動化サービスを開発しました。これによって、従来は熟練労働者が選別していた幼魚(ヨコワ)を、自動測定することができます。選別された幼魚(ヨコワ)は、別の繁殖業者の手に渡り、40Kgほどの大きさに成長するまで大切に育てられて出荷されることになります。

AI,IoTを漁業に活用した解決策

ここでの解決策は、クロマグロの幼魚(ヨコワ)を水中ステレオカメラで撮影し、AI,IoTを活用したクラウドに映像をアップロードします。アップロードされた映像は、AIによって分析され測定結果レポートを返します。クロマグロの映像データをAIに分析させることで、選別者の人員削減と測定精度の高い情報が得られることを目指します。この膨大なデータの処理は、手作業では個人により結果の質が異なるため、AIに分析させることで一定レベルの質の測定情報をアウトプットさせるようにします。

・水中ステレオカメラで撮影したクロマグロの映像データから、判定外のサイズを自動判定できるようにする。

・これまで熟練労働者が確認していた、手作業によるクロマグロの幼魚のサイズ測定をAIが行い、測定精度の高度化と、作業時間の短縮を目指す。

AI,IoTによる漁業への効果

ここでの効果は、クロマグロの幼魚の分析をAIに任せることで、人員の削減と測定精度の高い測定結果が得られました。そのため、熟練作業者はより必要な業務に取り組むことができ、コストの削減と選別作業の効率化に繋がります。また人員の疲労も軽減することができ、少ない人員での作業を可能にしました。

・クロマグロの幼魚の選別が容易になることで人員・コスト削減が可能、養殖クロマグロの安定供給に繋がる。

・水中ステレオカメラで撮影したクロマグロの幼魚の映像データから、サイズを自動判定することで、より効率的な作業が可能になる。

・映像による測定作業をAIとIoTが行うことで測定精度の高いアウトプットが得られ、測定の高度化と、選別作業時間の短縮に繋がる。

『画像分析、人工知能(AI)、IoT、機械学習(ML)を組み合わせることでマダイの幼魚を選別する』

日本の養殖技術の研究が認められた大学と、米国の有名IT企業が強力して、画像分析・人工知能(AI)・機械学習(ML)を活用したマダイの幼魚を選別する方法を開発しました。従来は、マダイの幼魚を選別する際にベテランの作業者の手を借りていましたが、有能な人材を確保することが困難な時期に、効率的に機械化する必要性を感じていました。

そこで、画像分析・人工知能(AI)・IoT・機械学習(ML)テクノロジーを活用することで、人間の選別に代わって、AI(人工知能)機械学習(ML)を使用して再現する方法を考えました。また、MicrosoftAzure Machine Learningとクラウドサーバーを活用して、自動測定して並べ替えるシステムを開発しました。

このように、画像分析・人工知能(AI)・機械学習(ML)を組み合わせることで、熟練作業員が現在行っている作業を実現できると考えています。



AI,IoTを漁業に活用した解決策

AIやMLによるマダイのサイズ測定データを解析し、サイズを予測し選別作業の最適化を行い効率的な作業を目指します。またAI,IoTの活用により、マダイのサイズ測定を行うことにより、作業人数減らす事ができ、労働時間と人件費削減を目指します。マダイの正確なサイズ測定には、画像解析とAI、高性能カメラやIoTセンサーを使用したデータの収集・解析を行います。AIからの測定結果を反映して作業員が選別します。

・マダイの自動サイズ測定データによる情報の収集・解析。

・マダイの幼魚の選別時に使用するポンプ流量を最適に制御することにより、作業時間を最適化する(ポンプ流量が速すぎると選別が遅れ、ポンプ流量がお遅すぎると作業時間が遅れてしまうため)。

 

AI,IoTによる漁業の効果

マダイのサイズ測定作業をAI・IoTにより最適化することで、より効率的な作業が可能です。また、人員の削減に繋がることで、より必要な業務に取り組むことができます。人員の疲労を軽減したり、労働環境の改善にも繋がり、より魅力的なキャリアとしての産業を目指す事が期待できます。

・マダイのサイズ測定を人口知能(AI)で分析することで、幼魚の正確なサイズや数のデータを得られることができま す。そのため、より少ない人員で効率的な作業をすることができます。

・AIとIoTセンサーによってポンプの流量制御を行う事により、作業時間が最適化され安定供給に繋がります。

・マダイのサイズを自動測定することにより、要員を減らす事ができ、人はより重要な仕事に取り組むことができます。

漁業・水産業界でのAI・IoT活用事例を紹介のまとめ

今回は、人工知能(AI),IoTを活用した養殖魚の自動測定システムを紹介しました。これらに使用されているイメージセンサーやカメラ技術は、人物や物の画像認識にも活用されています。漁業・水産業界では、近年漁獲制限により養殖の重要性が増してきた為、人件費削減作業効率化のためにAIが導入されてきました。

これらの取り組みは、完全養殖クロマグロの生産性向上を通じて、持続可能な水産資源供給と国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標14海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」の達成に貢献します。このように、現在では国と企業、人々がチームワークによって問題を解決することが求められています。

AI,IoTを漁業に活用する利点として、今回紹介したような一次産業をより魅力的な職場や仕事に変化させることも期待されています。それは、やりがいや魅力のある仕事でも、高齢化や人手不足により優秀な人材が集まりにくくなっているからです。そのため、人工知能(AI)を活用し、世界的な目標であるSDGsに力を入れる事により、多くの人の注目と感心を集める事ができるようになります。

参考URL:

【水産業×AIの・IoT事例】

https://www.toyota-tsusho.com/press/detail/200521_004622.html

https://news.microsoft.com/apac/features/ai-and-fish-farming-high-tech-help-for-a-sushi-and-sashimi-favorite-in-japan/

【SDGs】

https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31737

 

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3件のコメント

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